絵本論講座Ⅱ 西巻茅子さん
絵本論講座の2日目午後は、絵本作家の西巻茅子さんが講師でした。
『わたしのワンピース』『はけたよはけたよ』など可愛らしい絵本を数多く作られている西巻さん、ご本人もふんわりとしたキャラクターかと思いきや、理論派のかっこいい方でした。 「絵(を描く)というのは決して特殊な能力ではなく、誰もが発信でき、誰もが受け止められるものなんです」 芸大卒業後、絵画教室で子どもに絵を教えていたときに、なんのわだかまりも緊張もなく、のびやかに絵をかく子どもの姿に、衝撃を受けたそうです。 西巻さんの代表作『わたしのワンピース』は、ウサギの女の子がお花畑のなかを歩いたら、真っ白なワンピースがきれいな花模様になった、という風にその場の状況によってワンピースの模様が次々と変化していくのですが、出版社の人からは「花畑を通っただけで、なんで服が花模様になるのかがわからない。その理由(たとえば心から花を愛していたからとか)がわかるシーンを入れるように」と言われ、西巻さんは「絵本というのは絵でみていくもの。そんな文学的理由は付けたくない」と頑張られたそうです。 子どものころから大好きな絵本ですが、もしそんな理屈っぽい説明シーンがあったらちょっと…と思いました(笑)。 「作者が楽しんでいる気持ちを子どもに伝えよう」と、ご友人と一緒に数ヶ月かけて刺繍とアップリケで制作された3つ子の子ブタの絵本(『あいうえおはよう』『ぼくたち1ばんすきなもの』)、お互いにもてなし好きな性格で、ご馳走をつくりあったため、作品が完成したときは8キロも体重が増えてしまったそうです。「悔やんでもくやみきれない…」との言葉に、申し訳ないと思いつつ笑ってしまいました(絵本の出来は、とても気に入ってらっしゃるそうです)。 「絵本は紙とインクでできているわけではない。かいた人の生きている姿、それをつめこもうつめこもうと考え、つくられている」 あたたかなタッチの中に、西巻さんの思いや志が込められているのですね。
by yagikuro-3
| 2005-08-20 21:52
| 絵本・児童書
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